お葬式
- 絵空事
- Jan 23, 2019
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Updated: Jan 24, 2019
冠婚葬祭の日記は少しだが書いてきている。
お葬式についてまだ書いていなかった。故人の方、そのご家族の事を踏まえ写真は少しだけである。

まず第一に世界共通の様に喪服、黒を中心に着る。
タイは自由の国なので黒でなくとも誰も何も文句は言わない。例えばズボンが黒で白のYシャツ(ネクタイ、ジャケットなし)でもいいし、紺色でも地味な色でも誰も何も咎めない。逆に黒でTシャツでも問題ない。ばっちりスーツやジャケットを着用すべきという概念まではない。
厳かな式というよりも故人へのお別れ、最後の挨拶に来た人達が集まりわいわいしているという雰囲気の方が強い。笑顔も笑い声も普通に聞こえるので重々しい式ではない。ある意味ではいつまでもくよくよしていられない、前を向いて歩こうという雰囲気でもある。
ただ人によってはお経を聞いている間に高々と大笑いをする人もいるのでそれはさすがに白い目で見られるし、場違いだと思う。
田舎の葬式などは本当に葬式かという勢いで盛り上がっている。お酒も故人の家族から振舞われたりするのでみな久々に会う人達が集まり久々の再会を祝うかの如く盛り上がっている場合もある。

タイの文化ではお葬式は3日から7日続く。その家族の予算にも寄るし、その他の事情で連日続ける時間の余裕がない人もいるのでまちまちである。
家族の予算以外にも地方などであれば地元の寄り合いで積み立てられているお金を葬儀費用として使えるので今まで参加したなかでは1日で終わる葬儀はまだない。
※イスラム教の場合は死後24時間以内に埋葬(土葬)が必要なのであっという間に終わってしまう。
お寺も星の数ほどあるのでお寺選びもある。
地元密着方の人はいつも行っているお寺があったり親しくしているお坊さんがいる人もいるので、自動的にそこにお願いをする事になる。あとはその家族の家からそんなに遠くない場所だが有名なお坊さんがいるお寺を選ぶ人もいる。お寺も予算によって選ばれる。
有名なお寺は家族は経済的にゆとりがある人達に必然的に選ばれる。それからお寺が葬儀屋を兼ねているのでお寺が全てをしてくれる。故人の写真は家族が用意をするが、式場の飾りつけ、花飾りなどはお寺側が行ってくれる。

王宮周辺の旧市街にあるお寺群はそいう有名なお寺であり、政府機関、軍人、警察関係または経済的に成功している人達に選ばれる。その周辺以外にBTSエカマイ駅の真横にあるワッ・タートーンも有名である。
それから葬式を飾る花輪がある。
花輪はそれぞれ故人を想う人達が花輪屋で注文をして花輪屋が持ち込んでくれる。
有名な葬式の葬儀を行うお寺の前、その近所に花輪を作るお店が大概であるがある。
だいたいのお店ではバンコク市内のお寺であればどこの花輪屋で頼んでも対外送料は無料だ。運搬方法はバイクの後ろに固定をして運ぶ。バンコクの道路を歩いていると結構見かける光景である。
近年ではインターネットでお店のサイトに入りデザイン、値段で決め指定口座に代金をオンラインで支払うことで後は全て自動的に行われるのでとても便利だ。
花輪は大きくとも直径2メートル程度もの。値段も1000バーツから4000バーツである。大きさや花の種類で値段が異なる。
特に花の色の指定はないので赤やピンクがある場合もある。一番選ばれるのは白が多いようだ。

上に書いたように3日から7日と書いたが一日中毎日ではない。夜7時にお坊さんが来てお経を唱える儀式が30分程度あるだけだ。式場に入るとまずはお水が出される。これはタイの文化でありどこの場所にいっても水、飲み物を出して来た道のりの疲れを少しでも癒してもらおうというもてなしである。
タイ式の場合7時になると死者を弔うお経が3,4回唱えられ、その日その日故人の家族以外の式代表人がお坊さんにお供え者をして、その後お坊さんは退出していく。
お経はバーリー語とタイ語とある。バーリー語はさっぱりわからないが、毎回、毎日出ているが毎日違う様に思える。こちらのお経はある意味歌を歌う様に唱えるので明らかに違うお経が唱えられていると分かるからだ。

タイ語のお経はお経というよりも故人の家族を勇気付けるような内容に聞こえる。
お経を唱えている間は皆合唱をしてお経を聞き、故人の冥福を祈る。
式によるし、人数にもよるが何度も言うがタイは自由の国である。お坊さんがお経を唱えていようがおしゃべりする人はおしゃべりしている。携帯でゲームをしている人もいる。
周りの人もお寺では事を荒げたくないので何も言わずそれぞれがそれぞれ干渉しないようにしている。
それから葬式の場合、お坊さんは4人である。家で行う行事の場合は9人なので念の為違いがある事だけ書いておく。


お坊さん退出後故人の家族側による軽食のもてなしがある。人によってはS&Pのレストランやタイ航空にも出しているケータリングサービスからのボックスランチ形式の軽食もあればその家族、親戚がその場で作るまたは外のお店に注文をして持ってくる軽食もある。この軽食は故人の家族側の手配となる。

こちらには華僑も沢山いるので、台湾系や香港系の場合は上記のタイ式30分程度の後に軽食休憩10分程度があった後、故人への敬礼の式が10分程度ありそれで式は終了となる。
お坊さんがお経を唱えている間は椅子に座っているが、この故人への敬礼は棺の近くにみな集まり立った状態で会釈をする事で敬礼をする。故人へ敬礼の式は線香を3回、お茶を1杯、みかんを一皿(3つ)と後は紙を燃やして敬礼をする。

香港式はまだ参加した事がないのではっきりと言えないが、台湾式の場合は故人の家族は麻の白装束を着ているのが特徴的である。それから場合に寄ってはお経以外の式辞進行がタイ語と中国語の2ヶ国語となる。
写真で故人の家族たちがお互いに手を体に触れているのは全員で一つの儀式を行うという意味になる。タイの仏教でも同じ風習がある。
写真は翌日の火葬に備えての儀式の為、故人の子供達は麻色の着物に身を包んで、その孫達は白の綿の服に身を包んでいる。
葬式の最後は火葬を見届ける式である。殆んどの場合午後4時に火葬が行われる。4時前から弔いの式があり、火葬の際に故人に死者を弔う花を手向け式は完了となる。

火葬の際に棺に献上する紙の花である。ドークマーイジャンと呼ばれる。死者が火葬されるときにだけ使われるドークマーイ(花)である。
タイ華僑はまた別の独特の道を歩んでいる。
夕方から夜の11時まで毎日式を行って死者を弔う。

タイ仏教のお寺であってもそれをまるで中国仏教のお寺のようにして儀式を行う。もちろん華僑の中国仏教のお坊さんもお経を唱えに来る。
どこかの国の様に除夜の鐘がうるさいという苦情が出るようにバンコクでも同じで近所の住民から苦情が出るので多くのタイのお寺は夜の7時半までと決めているが、一部のお寺は8時過ぎまで儀式を行える。

儀式の中で橋が出てくる。三途の川を渡る橋ではなく天国へ登る橋である。
火葬の前日は故人を天国に送り届ける儀式が行われるので、この橋が出てくる。
橋を渡る際と降りる際にお金を桶に入れる事で故人がお金を持って天国にいけるという信仰だ。何度も何度もグルグルと回りながら橋を渡り、賽銭をする。
それ以外にも天国でも不自由なく暮らせるようにいろいろなものを持っていけるように橋を渡る。何度か時計回りで周り橋の上り下りを繰り返す。
お金と必要なものを送り届けた後、家族たちは反時計回りで橋を繰り返し渡りこちらの世界に帰ってくる。
この儀式が終わると紙の家やお金、必要なもの、故人の洋服をもって火葬場でそれを焼く事で本当に天国で持ってあがる。家の模型などはかなり大きく2メートル四方で、家の中にはお金がいっぱい入っているものである。
炎とはとても神秘的なもので宗教と切っては切り離せないものだと実感した。
故人の家族たちも炎で焼かれていくものを見、煙が空へ上がっていくのを見て涙する。その間も中国仏教のお坊さんがお経を唱え天国へ導いてくれている。

この儀式を持って翌日の故人の遺体の火葬が出来る様になるのである。
紙の家、紙で作った天国でも必要なものを焼いた後に初めて親族皆がかぶっている三角頭巾を取り、決して振り返っては行けないと言われ火葬場から式場に戻り、最後にもう一度遺体のある棺桶に中国仏教のお坊さんと一緒に拝み、お坊さんに布施をして式が完了となる。
故人の家族にとっては本当はひそっりとしていたい時期であるが最大7日間式に訪れた人々に毎日お礼をするので精神的に疲労をしている時期なので体に答えるのではと勝手に思っているが最後に故人にしてあげられる仕事なので皆一生懸命で決して間違ってはいけないと真剣である。
こういった仕来りや風習は現代人にとっては意味が分からないものが多いし、お金も時間もかかるものだ。ただ、こういう事を続けて行くことは文化の継承であり古人が作り上げてきたものを知る事が出来るとても大切な機会でもあると思っている。
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